森の心理相談室

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精神分析について

1.精神分析とは

精神分析とは、専門的に確立されたカウンセリング方法の1つであり、数あるカウンセリング技法の源流となる方法でもあります。自分の人生やこころの問題について、根本的に解決していきたい、真剣に向き合っていきたいと考えるクライエントさんに自信をもってお勧めできる方法です。
 私は、長年「精神分析」の訓練を受けてきました。そしてこの「精神分析」を多くの皆さんに提供したいと考え、当相談室を開設しました。
 厳密にいうと、週4回以上の頻度で行われるものを「精神分析」、週1回~3回の頻度で行われるものを「精神分析的心理療法」といいますが、ここでは分かりやすく理解していただくために「精神分析」という用語で解説します。

2.無意識を扱う方法

 他のカウンセリング方法と精神分析の大きな違いは、精神分析ではこころの無意識を扱うということです。精神分析の世界では、こころには3つの領域があると考えられています。まず普段自分自身のこころの中で何を考え、感じているかということを理解している「意識」の領域、注意深く自分のこころを見つめることで理解することができる「前意識」の領域、そして自分がいくら努力しても理解することができない「無意識」の領域です。

そしてこころの問題の多くは、この無意識のこころの世界が大きく影響していると考えています。言い換えれば、自分の無意識のこころについて十分に理解できていないから、こころの不具合が起きるというのです。ですからこころの問題を解決していくためには、こころの無意識の領域について理解していくことが必要であり、それを援助する関わりが「精神分析」という方法です。

 日常会話の中で、「分かっちゃいるけどやめられない」という言葉をよく耳にしますね。例えば禁酒をしたいと思う人がいて、それでも飲酒してしまうという行動が繰り返されているとします。この人は、本当に禁酒したいと思っているし、飲みすぎることが体に悪いことも分かっているのです。ただそれはこころの意識領域で分かっているだけです。無意識の領域では、「飲酒をやめたくない」と強く考えているのです。日々の暮らしの中で感じるストレスや苦しさについて考えていくことはとても辛いので、お酒を飲んでこころを麻痺せることで忘れようとしているのかもしれません。そしてこの無意識領域の考えが、「飲みすぎる」という行動を支配しているのです。

「意欲がでない」「気持ちが落ち込む」というような抑うつ的な症状をもつクライエントさんは、「全く悲しくもないのに、涙があふれて止まらない」という現象をよく語ります。これは飲酒の例とは逆で、意識の領域では何も感じていないのですが、無意識の領域では悲しくて辛い気持ちを強く感じてり、その反応として涙があふれるくるのです。

このように人のこころや身体、行動に強い影響を及ぼす「無意識」のこころについて、もっと深く理解していこうとするのが、精神分析です。

3.無意識の現れるところ

ここで、「無意識はいくら努力しても自分では理解できないのに、どうやって理解していくのか?」と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。確かに「無意識」は、自分自身では理解することはできませんが、外側には絶え間なく表出されています。

例えば、あなた自身はいつもと変わらないと思っているのに、家族や同僚から、「今日何か元気ないね」と言われたことはありませんか?それは、あなたの無意識で考えていることや感じていることが、表情や立ち振る舞いなどに表れているからです。意識の世界では、平気だと思っているけれど、無意識の世界では落ち込んでいるのかもしれません。その落ち込みが、自分では気づかないうちに表情や立ち振る舞いに表れており、周りの人は、その表情や立ち振る舞いから、あなたが「元気がない」と判断しているのです。

無意識のこころはいたるところに現れます。話している内容や話し方、言い間違い、手振り身振り、立ち振る舞い、からだの症状、絵や小説などの芸術作品等々です。特に眠っている時にみる夢は、「無意識の王道」と言われており、無意識の世界がそのまま現れることも多いため、精神分析では特に大事に扱います。

精神分析を行うカウンセラーは、いたるところに現れる無意識の世界について理解するための訓練を受けています。クライエントさんの言動、立ち振る舞い、その場の空気感等々から、クライエントさんの抱える無意識の世界を理解し、お伝えします。こうして自分自身の努力だけでは、理解することができない無意識の世界について知ることができるようになるのです。

4.精神分析の実際

①頻度や時間

 精神分析は、週に1~6回の頻度で、1回45分~50分、同じ曜日同じ時間に行われます。この同じリズムでお会いしていくということには重要な意味があり、それだけでこころの安心につながります。私の実感としては、週2回以上の頻度でお会いすることができると、確かなこころの変化をもたらすことができると考えています。

②実施方法

精神分析では、基本的にクライエントさんはカウチ(寝椅子)に横たわり、カウンセラーはクライエントさんの頭の位置に座り、対話を重ねていきます。どのような内容を話すのかですが、クライエントさんには、自分のこころを見つめていただき、こころの想い浮かんだことを、思い浮かんだ順に自由にお話してしていただきます。このことを「自由連想法」と呼びますが、この方法によってクライエントさんの無意識の世界が理解しやすくなります。
なおカウチに横になることに抵抗がある方は、椅子に座ってお話しすることもできます。

③ご利用いただける方

「精神分析」は基本的にどなたでもご利用いただけます。現在悩みや苦しみ、こころの問題を抱えておられなくても、例えばよりよい生き方がしたい、自分のこころについてもっと知りたいと思われている方でも、精神分析はお役に立つことができます。それはどんな人でも、こころの中に無意識の領域を抱えており、その無意識のこころについて理解していくことで、確実にこころの自由度は広がっていくからです。

 心理職・カウンセラーや、子育て・老人介護・対人援助職の方のように、日常的に自分のこころを使ってお仕事をされている方や、学者・芸術家・作家といった創造的なお仕事をされている方にもお勧めできる方法です。

ただし精神分析は、万人にとって適した方法かというと、そうではありません。クライエントさんの現在のこころの状況、性格、時間や経済などの現実的な問題などによっては、「精神分析」がお役に立てない場合もあります。そこで初回カウンセリング後、大凡2~4回程度の「見立てのためのカウンセリング」によって、「精神分析」がクライエントさんのお役に立てるのがを検討した上で、開始することになります。